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大阪高等裁判所 昭和61年(行コ)55号 判決

京都市中京区西ノ京南原町三五番地

控訴人

今井静平

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都市中京区柳馬場通二条下ル等持寺町一五

被控訴人

中京税務署長

喜多村和夫

右指定代理人

高須要子

石田一郎

曽根健次

田中猛司

高田安三

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五七年一二月一七日付けで控訴人に対してした控訴人の昭和五五年分の所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定の各処分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決

二  被控訴人

主文同旨の判決

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、それをここに引用する。(当審における控訴人の主張)

原判決は、「控訴人は本件不動産に居住しておらず、本件不動産は租税特別措置法三五条一項に定める『居住の用に供している家屋』に該当しない。」旨認定判示したが、以下に述べる理由により不当である。

1  原判決は、太秦の居宅玄関に「少林寺拳法有段者会西ノ京支部」との看板を掲げていたことを理由に太秦の借家に控訴人が居住していたと認定したが、これは誤りである。右看板は以前居住していた建物に掲げていたものであるところ、妻恵美子が太秦の借家に別居居住するに当たり、押し売り等の除去策として、たまたま右看板を掛けたにすぎないものである。ちなみに、右看板は、日本少林寺拳法京都別院から受領したものであるが、居住地を変更した場合にはその旨を届け出て居住地に合致した看板を再度受領することが義務づけられているから、控訴人が太秦の借家に真に居住していたのであれば、「少林寺拳法有段者会太秦支部」との看板を掲げていたはずである。

2  右京税務署への所得税確定申告は関与税理士にすべて任せていたから、これは本件不動産に居住していたかどうかとは全く関係がない。また、控訴人は、国民健康保険の所在地を昭和五三年七月二二日から桧峠町と届け出ているが、当時妻恵美子と別居していたものの、離婚することを決意したわけでもなく、将来同居することも考えていたので、妻子のため右住所にしたにすぎないものである。

3  原審証人福川弘子は、本件不動産の内部を見分した昭和五五年七月ころ、本件不動産内に生活用品等は見掛けられず、人が居住している様子はなかった旨証言しているが、右福川弘子は本件建物のすべてを見たわけではなく、控訴人は本件建物の離れの場所で炊事等をしていたものであるから、右証言を証拠とした原判決は事実認定に誤りがある。

第三証拠関係

当事者双方の証拠は、原審及び当審訴訟記録中の各書証目録と証人等目録に記載のとおりであるから、それをここに引用する。

理由

一  当裁判所も、当審における証拠を加え審究するも、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであって、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、それをここに引用する。

1  原判決六枚目裏三行目の「右買受」を「本件不動産の譲渡」に、同七枚目表二行目の「その」を「原審及び当審における控訴人」に、同八枚目表五行目の「原告本人」を「原審における控訴人本人」に、同九枚目表一行目の「その」を「原審における控訴人」に各改め、その九行目の末尾に続けて、「控訴人本人は、当審において、「ちゃんと見てもらっていたら、生活の形跡はあったと思います。」と供述するけれども、原審証人福川弘子の証言によれば、同人は本件不動産の一、二階及び離れの各部屋を隈無く見て歩いたことが認められるから、控訴人の右供述をもってしてもいまだ右認定を左右するに足りない。」を加える。

2  同九枚目表一〇行目の「原告」を「原審及び当審における控訴人」に、同行の「及び証人」を「並びに原審証人」に、その末行の「の証言」を「、当審証人今井直司、同打出維久造の各証言」に、同行の「いたかに」を「いたかのように」に各改める。

3  同九枚目裏八行目の「原告」の前に「以上の事実によれば、」を加え、その九行目の「いるものであり」から一〇行目の「あったにしても」までを「いたものであって、これを居住の用に供していたものとはいい難いといわなければならない。なお、控訴人が時たま同所で起居することがあったとしても」に、同一〇枚目表三行目の「当庁」を「京都地方裁判所」に、その五行目から六行目の「ことに照らし、その」を「と解するのが相当であるから、本件不動産が控訴人の「居住の用に供している家屋」に該当しないことは明らかである。すなわち、控訴人の」に、その七行目の「太秦の借家に転居し、」を「転居した太奏の借家及び」に、その八行目の「桧峠町」から「窺われる」までを「転居した桧峠町の自宅がこれにあたるものと認めるのが相当である」に各改める。

4  なお、控訴人は、(一)「少林寺拳法有段者会西ノ京支部」の看板は、妻恵美子が太秦の借家に別居居住するに当たり、押し売り等の除去策としてたまたま掲げたにすぎない、(二)右京税務署への所得税確定申告は関与税理士にすべて任せていたから、これは本件不動産に居住していたかどうかには全く関係がない、(三)国民健康保険の所在地を桧峠町と届け出たのは、将来の同居を考え妻子のためにそのようにしたにすぎない旨主張し、控訴人本人は、原審及び当審において右主張に沿う供述をしているけれども、前記認定の事実に照らして右供述はたやすく措信できず、他に本件に関する当裁判所の認定判断を左右するに足りる証拠はない。

二  よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条一項により本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 日野原昌 裁判官 大須賀欣一 裁判官 大谷種臣)

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